会社のミッションとあなたの目標はかみ合っているか2004年10月13日 16時35分
会社の方針を理解せよ
皆さんの上司は、会社の「ビジョン」をキチンとあなたに説明できますか? また年度末に行う
「業績評価(いわゆる「査定」です)」の際、ちゃんと「バリュー」に基づいて公平な判断をしていると思いますか?
外資系の会社では、「三種の神器」とも呼べる、「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」の三つが、ほぼ例外なく
定められています。
「ビジョン」は会社のレーゾンデートル(存在意義)を定めたもの。そこには「かくあるべき」、「こうなりたい」といった
“会社にとっての夢”が盛り込まれています。もちろん、夢だけで会社は成り立ちませんので、それを具体化するプラン
――いわゆる「中期経営計画」みたいなものが策定され、実行に移されることになります。
実行に際しては、「もうかればいい」、「夢を実現するためならば何をやってもいい」ということには当然なりませんので、
正しく行動するための「行動指針」が必要となります。それが「バリュー」と呼ばれるものです。
これらを、あなた自身の立場に立って、さらに分かりやすく言い換えてみましょう。これから会社にいる間、あなたはまず、
会社の夢の実現に向かってみんなと一緒にがんばることが求められています(これが「ビジョン」の役割です)。
夢を実現するために、例えば向こう3年間で売り上げを倍増するプランが策定され、それに基づいてあなたの部署の
役割が、そしてあなた自身に求められる貢献項目・数値目標が定められます(これが「ミッション」の役割です)。
ミッションを実行するにあたり、“こういう行動を取れば会社は評価しますよ”――言い換えれば、これを外れれば評価の
対象になりませんし、それどころか時と場合によっては懲罰の対象にもなりますよ、という指針が示されます
(これが最後の「バリュー」の役割です)。指針がなければ、社員の行動を統率することができません。
多くの場合、皆さんの目標は「今期は売り上げをいくら伸ばして・・・」といったハッキリしたものですから、期末の業績評価
の際に「モメる」ことはないでしょう。しかし、仮に目標を達成しても、それだけで満足してはいけません。
目標の意味を考えよう
ここで大事になるのは、そもそもこの私が達成しなければならない数値目標は、いったいどういうミッションに基づいて
策定されたものなのか。そして、目標を達成することによってビジョンの実現に一歩ずつ近づいているのかどうか。
これらのことに、確信を持つことが必要です。
なぜならば、多くの人が(おそらくあなた自身もそうでしょうが)ただ「お金のためだけ」に働いているのではないからです。
私たちの人生をも賭けるこの「カイシャ(もちろん、これはあなたが属する組織・団体一般を指す言葉です)」の夢に共感し、
その実現にどれだけ(たとえ微力であっても)貢献できたかが、“自己実現”に欠かせないものだからです。
ワンランク上のビジネスパーソンは、目標を達成できたかどうかに意識をとどめてはいけません。
その目標がカイシャにおいて持つ価値や、目標を達成することで“自己実現”にどれだけ近づけるか。こういったことにも、
こだわらなければいけないと思います。
冒頭にご紹介した外資系企業における“三種の神器”は、実は、外資系のみならず、すべての企業ならびに経営者が
持ち合わせていなければならない必須アイテムです。
ですから、もし、あなたご自身の上司に「ウチのビジョン、ミッション、バリューって、何ですか?」と聞いたときに、
答えられないとすれば、大きな問題ということになります。あなたが何を目標にして行動すべきで、何を基に評価されるのか,
査定者である上司がよく分かっていないということだからです。そして何よりも、あなたが満足のいく自己実現をその会社で
図れるのか、大きな疑問符が付くことになるからです。
自社内にチャンスがある良さを活用する
「外資系」の会社というのは、国内企業と比較して「職種」が確立していると思います。職種が確立しているというのは、
すごく大切です。職種が確立しているからこそ、そこに「人材マーケット」が生まれるわけです。
職種を軸に考えると、「○○会社の木村さん」ではなく、「財務のプロである佐藤さん」という理解になります。
職種が確立することにより、各々のプロが活躍できる「人材マーケット」が生まれるわけです。そして、それが「人材の流動性」
へとつながります。
この「人材の流動性」。なにも「社外への流出」だけを意味しているワケではありません。社内において、人材を流動させる
こともできます。「ジョブ・ポスティング・システム」(社内公募制、フリーエージェント制)という言葉を、皆さんも一度ならず耳に
したことがあるのではないでしょうか? また、募集している仕事を小耳にはさんだときに、「あ、私もぜひチャレンジしたいな」
と実際に思った人が結構いるのではないかと思います。
こうした仕組みの登場は 「終身雇用制度」においても、「職種の確立」や「成果主義」を企業が意識していることの表れだ
と思います。つまり、これからは「手に職を付ける」ことが、みずからの身を守る第1条件となるわけです。
ワンランク上のビジネスパーソンは、この「職種」を強く意識することが大事になると思います。
この「日本企業」における「社内公募制度」。「外資系」のようにキッチリと職種が確立していて、なかなか「横の異動」が
できないところとは違い、「組織横断的な異動」ができる(実は、この点が「日本企業」の良さの一つでもあります)
優れた制度ですから、活用しない手はありません。
「組織横断的な異動」が可能ということは、例えば「私は今、経理をやっているが、営業に行く」、「技術を担当しているが
総務へ行く」といった、「外資系」企業ではあり得ない「職種を越えた異動」が可能なわけです。その中には「異職種」の
スタッフを募って立ち上げる「社内プロジェクト・メンバー」なども含まれるでしょう。こうした取り組みは、「日本企業の最大の
強み」とも言えます。
ただし、「自社の中にチャンスがある」ということは、言い換えれば、「自社内にチャンスがなくなれば、この会社にとどまる
理由がない」ことをも意味します。つまり「日本企業」というのは、「自社の中にチャンスがある限り、今後も魅力があって、
社員にとって所属し続ける価値がある存在」であるわけです。そういう意味において、「自社の中にある仕事の魅力を高め、
自社の中での人材の流動性を高める」という努力を、企業はドシドシすべきだと私は思います。
第4回は「パーソナル・バリュー」についてお話します。パーソナル・バリューとは、自分にとって大事なものは何か、
ということです。(次回掲載は、10月26日の予定です)